川上愛理

私にとって絵画とは、こちら側の世界とキャンバスの向こう側にある世界を繋ぎ、或いは隔てるための「窓」である。絵を描くことは、言葉の檻に閉じ込められた表象を再現する行為ではなく、まだ名付けられていない感覚や、絵画世界の奥からこちら側を覗き込む来訪者、あるいはその世界そのものに出逢うための行為だと考えている。それはまさに「訳のわからないもの」を引き受ける身体労働であり、生きることそのものが未知の泉であるということを、受けとめる試みでもある。立ち現れる像や色、気配に耳を澄ませながら、絵の声の従者として描き出し、窓の向こうに存在する名もなきものたちに詩を与える。そしてその管理者(Caretaker)として絵画を創作することは、この世界で私に与えられた唯一の神聖な労働である。