
椅子という身体に最も近い家具を媒介に、人がモノに抱く「愛着」という感情の構造を問い直している。手仕事の痕跡を残す造形は、実用性と象徴性のあいだを往還し、使うことと感じることの境界を揺さぶる。工芸・アート・デザインを横断する実践を通じ、生活の中で見過ごされがちな情緒や記憶をすくい上げ、現代における「モノとの関係性」を再解釈することを目指している。制作の核にあるのは、機能と感性が拮抗しながらも調和する「居場所」をつくること。椅子は、人を支える最小の建築であり、感情を宿す彫刻でもある。そのあいだを行き来し、使うことの中に美を見いだし、感じることの中に生活の実在を取り戻す。木という素材の時間の層や手の痕跡を受け入れ、モノが人とともに歳月を重ねる豊かさをかたちにしていく試みを行なっている。