ICHION CONTEMPORARYは、ギャラリーのオープンを記念して、2025年1月13日(月)~5月3日(土)まで「GUTAIは生きていた | GUTAI: An Enduring Spirit」展を開催致します。「GUTAIは生きていた | GUTAI: An Enduring Spirit」展は、戦後日本において誕生した具体美術協会(Gutai)の精神と創造のエネルギーを現代に問い直す試みとして開催されます。具体美術は、1954年の創設以来、物質と精神が交錯する場を創り出し、その哲学と表現が国内外で高い評価を得てきました。「具体美術は物質を偽らない。具体美術に於ては人間精神と物質とが対立したまま、握手している。」という具体美術宣言の一節は、彼らの芸術が持つ根本的な考え方を端的に表しています。物質が持つ真実性を尊重し、それを人間精神との対話を通じて新たな価値に変える具体美術の理念は、戦後の日本のみならず、国際的な美術の中でも独自の地位を確立しました。
具体美術の活動は、抽象表現主義やアンフォルメルといった同時代の国際的な美術運動とも共鳴し、フランスの批評家ミシェル・タピエの尽力により、その革新性がヨーロッパやアメリカに広まりました。タピエは、具体美術を「アンフォルメルの延長線上にあるもの」として捉えながらも、物質と精神の対話という独自の哲学がもたらす新たな可能性に注目し、それを国際的な舞台へと押し上げました。このように、具体美術は単なるローカルな運動にとどまらず、物質の真実性を核に据えた普遍的な問いを提示する存在として、現代美術の歴史において欠かせない位置を占めています。
本展では、具体美術の精神を象徴する向井修二のインスタレーションを起点に、吉原治良、白髪一雄、田中敦子、松谷武判、元永定正といった具体メンバーの象徴的な作品群へと視点を広げていくことで、具体美術の精神が生み出した多様な表現とその背景にある哲学を体感できる展示となっています。向井修二は、「無意味な記号の集積」という独自の哲学を通じて、物質そのものと向き合い、それを精神性と融合させる挑戦を続けてきました。彼の記号は、特定の象徴や意味を拒絶し、その無意味性が観る者に新たな解釈と創造の自由を与えます。本展での彼の作品は、空間全体を覆い尽くす記号とバイオリンの音響が融合し、静的な建築空間を動的な創造の場へと変容させます。この過程は、具体美術が提起した「直接的な表現」の精神を現代において蘇らせるものであり、物質と精神の対話が新たな形で体現される瞬間を生み出します。
安藤忠雄が設計したICHION CONTEMPORARYは、具体美術の哲学を物質としての建築に具現化した空間です。「建築は凍れる音楽」というフリードリッヒ・シュレーゲルの言葉が示すように、この建築は静的な美と秩序を持ちながらも、その中に詩的な感情や思想を内包しています。ゲーテが建築を「人間精神と物質が交わる詩的な媒体」と表現したように、この空間は向井の記号と音響の介入によって、静から動へ、物質から新たな精神性へと変容します。安藤建築の持つコンクリートの硬質な物質性が、具体美術の掲げる「物質を偽らない」という理念と共鳴し、新たな調和と創造の場を作り上げています。
展示作品群には、吉原治良の抽象絵画や白髪一雄のアクションペインティング、田中敦子の「電気服」、松谷武判の詩的な探求、そして元永定正の生き生きとした色彩と形態が具体美術の多様な表現として含まれています。1970年の大阪万博で示された具体美術の未来志向の表現は、当時の日本が抱いた希望と楽観を象徴するものでした。一方で、2025年の大阪万博が掲げる環境問題や多様性といったテーマは、現代において具体美術の精神をどのように再解釈し、応用すべきかを考える契機となっています。具体美術の哲学は、過去に閉じられることなく、常に未来への問いを生み出す力を持っています。
「GUTAIは生きていた | GUTAI: An Enduring Spirit」展は、物質と精神、静と動、過去と未来が交錯する中で、具体美術が持つ創造の可能性を現代に示す試みです。この展覧会を通じて、具体美術が私たちに問いかけるその普遍的なメッセージをぜひ体感してください。
11:00 - 18:00 最終入場17:30
※最終日のみ最終入場16:30、17:00終了
Sun.Mon.Holiday
Free
吉原治良 白髪一雄 元永定正 田中敦子 嶋本昭三 上前智祐 吉田稔郎 山﨑つる子 松谷武判 向井修二
※10名様以上でのご来場を予定されている場合は、必ず事前にお電話またはメールにてご予約をお願いいたします。ご予約のない場合は、当日のご入場をお断りいたしますので、あらかじめご了承ください。
1970年 アクリル、キャンバス 195.0×260.5cm
19xx年 油彩、キャンバス 90.5×116.5cm
1986年 グワッシュ、紙 192.7×80.3cm
1993年 ミクストメディア 162.0×130.0cm
2024年 ミクストメディア Assorted sizes
1970年 アクリル、キャンバス 195.0×260.5cm
19xx年 油彩、キャンバス 90.5×116.5cm
1986年 グワッシュ、紙 192.7×80.3cm
1993年 ミクストメディア 162.0×130.0cm
2024年 ミクストメディア Assorted sizes
向井修二、1936年兵庫県生まれ。1959年、西宮市美術協会にて元永定正と出会い、同年に第8回具体美術展に参加。1961年には具体美術協会に正式に加入し、最年少のメンバーの一人となる。向井の作風は、大量の無意味な記号を積み重ねることを特徴とし、あらゆる価値体系の無効性を表現することを目的としている。この概念は、彼の独自の芸術的アプローチの基盤となった。1964年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)主催の「新日本絵画と彫刻」展に作品が選出され、全米巡回展に出品。MoMAはその後、彼の作品を永久収蔵とする。1966年、大阪・梅田のジャズカフェ「Check」にて、空間全体を記号で覆う大規模なインスタレーションを制作。日本で初めて、記号によって空間全体を埋め尽くす試みとなった。2013年には、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館の具体美術回顧展「具体:燦爛たる遊び場」に参加し、代表作《シンボル・ルーム》を再構築。館内のエレベーターや洗面所の表面を数百万もの記号で覆う作品を展開した。
ニューヨーク近代美術館(MoMA)、グッゲンハイム美術館、大阪中之島美術館、兵庫県立美術館。